沖幸子イメージ
人はなぜ働くのか

私の子供の頃、ほとんどの周りの大人たちは、今のような非正規雇用などでなく社会に認められた毎日きちんと働く「正業」に従事していました。

社会の一員としてまじめに一生懸命働けば、安定した収入を得て自分や家族を養うことができ、社会や企業もそれにまじめに答えてくれるというお互いの信頼関係も築かれていました。

我が家では、父の給料日には家族そろって外で中華料理を食べるのが月一度の贅沢と楽しみでした。私たち子供には食後のソフトクリームも楽しみで、母には夕食の準備という家事からのつかの間の解放感もありました。働いた報酬として、家族みんなが幸せを感じる時間の共有が得られたのです。

隣近所の家族とは付き合いがあり、電話のある家が「呼び出し電話」の“無料サービス”を受け持ったり、留守中の隣の鍵を預かったり、大人たちは他人の子供を当たり前のように叱ったり、見守ったりしたものです。毎日を堅実に暮らせば贅沢はできないが普通に暮らせた時代。

小学校の同級生の親には、現在のような株の売買や土地の売買で食べている人もいましたが、社会が認めた「正業」ではなく、普通の常勤で働く大人たちとはなんとなく違う世界の人のように扱われていたような気がします。


内閣府の調査「働く目的は何か」によると、この十年間の間に「お金のために働く」が3人に1人から、2人に1人に増えたそうです。

そして、「社会の一員として務めを果たすために働く」意識が減ったといいます。
これは終身雇用など日本的雇用の習慣が、派遣や非正規雇用労働などによって企業も個人も「正業」の意識が変化したことにも関係がありそうです。

バブル崩壊以降、政府の構造改革路線とともに企業もグローバル化を目指すためにはこれまでの雇用制度の見直しを迫られ、結果、長期雇用制度をスリム化して雇用のコスト削減を図りました。
その結果、非正規雇用者が3割を超えようとするいま、この企業の雇用制度の変化とともに個人の働く意識も変わってきました。

働き方の多様化とともに働く意識も変化し、昔のような企業と個人の相互扶助的な忠誠心がなくなりつつあるのが現実です。
いま、会社と個人との関係をもういちど見直す時期ではないでしょうか。

企業は働く個人に幸せをもたらし、個人は企業の繁栄のため、自分たちの幸せのためにまじめに働く。
そして、誰もが働くことは日本の現在未来のために貢献しているという自覚を持てる社会にすることも、これからの日本の大きな課題かもしれません。


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